「話せているのに、なぜ伝わらないのか?」
「一応、話してはいるんですけど……何を言いたいのか分からなくて」
「一生懸命説明しているのに、話があちこち飛んでしまうんです」
療育の現場でも、こうした声をよく耳にします。
✔ 声はしっかり出ている
✔ 話す意欲もある
✔ 黙っているわけではない
それでも 「伝わらない」「分かりにくい」 と感じる——
この背景には、「文章力が低い」という単純な問題では説明できない要因があります。

こんな特徴はありませんか?
以下は、実際に相談の多いお子さんの特徴です。
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短い文で、内容があまり広がらない
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思いついたことを、そのままの順番で話す
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助詞(が・を・に・で など)の誤りが目立つ
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作文になると、型にはまった文ばかりになる
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文と文のつながりが不自然
これらに複数当てはまる場合、
「語彙が少ない」「練習不足」だけでは説明しきれない状態であることが少なくありません。

「文章力が低い」のではなく「文を組み立てる力」が育っていない
ここで大切な視点があります。
それは、
「文を知っていること」と「文を組み立てられること」は別の力だということです。
話せているのに伝わらない子どもたちは、「語彙力がない」のではなく
言葉をどう並べればよいか分からない状態ということも考えられます。

療育の視点で見る4つの困りごと
① 情報を選べない
伝えたいことが多すぎて、
「どれが大事か」を選ぶのが難しい状態です。
→ 結果として、話が散らかって聞こえます。
② 順序を保てない
出来事や考えを、
「起きた順」「伝わりやすい順」に並べるのが苦手です。
→ 思いついた順に話すため、聞き手は混乱します。
③ 文法を使いこなせない
助詞や語尾を“知ってはいる”けれど、
文の中で安定して使うことが難しい状態です。
→ 言い直される回数が増え、本人の自信も下がりやすくなります。
④ 全体像をもてない
「今、何について話しているのか」
「どこがゴールなのか」を意識しづらい状態です。
→ 作文では、文脈がつながりにくくなります。

家庭・教室でありがちなNG対応
すぐに言い直させる
「今の言い方は違うよ」「ちゃんと言いなさい」
→ 何が違うのか分からないまま、
“話すこと自体”が負担になりがちです。
型だけを教える
「最初に、次に、最後にって書こうね」
→ 型は守れても、
中身が本人の思考とつながらないままになります。

「伝わる文」を育てる具体的な関わり
「ちゃんと話してごらん」「もう一回言って」
つい、こう声をかけてしまいがちですが、
それだけでは子どもは 「どこをどう直せばいいのか」 が分かりません。
伝わる文を育てるために大切なのは、
会話のやりとりの中で、さりげなく“お手本”を見せていくことです。
会話を通して、表現する力を育てる関わり
子どもの言葉を、少しだけ整えて返す
たとえば、こんなやりとりです。
子ども
「かばんのところあった。」
大人
「かばんの中にあったの。」
これは、子どもの言葉を否定せずに、
助詞や表現を整えた形で返してあげる関わりです。
「違うよ」「そうじゃない」ではなく、
正しい言い方をそのまま聞かせることで、
子どもは表現を吸収していきます。
日常の会話が「表現力を伸ばす時間」になる
特別な教材や練習時間を用意しなくても大丈夫です。
子どもの言葉を繰り返す
子ども
「公園、楽しかった。」
大人
「公園、楽しかったんだね。」
少し整えた言い方で返す
子ども
「公園、楽しかった。」
大人
「公園で遊んで、楽しかったんだね。」
情報を一つだけ足して返す
子ども
「公園、楽しかった。」
大人
「すべり台で遊んで、楽しかったんだね。」
こうした関わりを積み重ねることで、
子どもは 「こう言うと伝わりやすいんだ」 という感覚を育てていきます。
話した内容を「目で見える形」にしてあげる
話した言葉は、口から出た瞬間に消えてしまいます。
そのため、子ども自身が
「自分は今、どんな話をしたのか」
を振り返るのは、意外と難しいものです。
そこでおすすめなのが、
子どもの話した内容を、大人がその場で書き留めていく方法です。
ポイントは、
✖ 文章としてきちんと書こうとしない
〇 単語や短いフレーズだけを書く
「こう言うと、もっと分かりやすいね」を一緒に考える
書き出した言葉を見ながら、
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情報を少し足してみる
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順番を入れ替えてみる
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余分な部分を整理してみる
といったやりとりをしてみてください。
「こう言うと、もっと分かりやすいかもね」
そんなふうに一緒に整えていくことで、
子どもは “伝わった”という達成感 を味わうことができます。
見て・聞いて振り返ることが、構成力を育てる
耳で聞くだけでなく、
目で見て確かめることで、
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話の順番
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文のまとまり
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情報の過不足
に気づきやすくなります。
この 視覚と聴覚を使ったフィードバックが、
「思いついたまま話す」から
「相手を意識して伝える」への大切なステップになります。

文章力は「直す」より「組み立てる」
話すのに伝わらない子どもたちは、
怠けているわけでも、能力が低いわけでもありません。
必要なのは、
❌ 間違いを減らすこと
ではなく、
⭕ 文を組み立てる経験を支えることです。
焦らず、比べず、
その子の 「考えを形にする力」 を一緒に育てていきましょう。

