「構造化」とは?方法や種類、メリットなどを分かりやすく解説します

児童発達支援の場で用いられている「構造化」をご存知でしょうか?「聞いたことはあるけれど、実践の方法は分からない」という方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、子育てや発達支援に役立てられる構造化の特徴やメリット、具体的な方法についてご紹介します。

 

構造化をわかりやすく解説します

 

構造化とは、「どう動いたらいいのか」「何をしたらいいのか」をお子さまが自ら考え、安心して行動できるようにするための方法です。「環境」や「活動」を視覚的に示したり、実際に設定したりするもので、スケジュールを紙に書いて視覚化して動きやすくするなどもその1つです。

構造化のポイントといえる「可視化」の基本的な要素は、①いつ、②どこで、③何を、④どのような方法でするのか、⑤どうなったら「終わり」か、⑥終わったあと次は何があるのかの6つです。

1972年にアメリカ・ノースカロライナ州で開発された自閉症教育プログラム「TEACCH(ティーチ)」(Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped CHildren)で用いられている、特徴的な手続きといえます。

児童発達支援における構造化は、あくまで対象のお子さんが、学習や生活に見通しを持って主体的に取り組むための方法や手段です。行動を管理するためのものではないほか、お子さんの個性を考慮せずに環境を揃える方法でもありません。

 

構造化をすると何が良くなる?

発達支援における構造化で得られるメリットは、主に6つが挙げられます。

 

①お子さまの混乱を防げる

特に自閉スペクトラム症のお子さまには「見通しが立てにくいことに不安を感じる」などの特性があります。そのため、スケジュールや時間など、さまざまなことを構造化で明確にして見通しを立てられれば、混乱せずものごとに取り組みやすくなるのがメリットです。

 

②必要な情報やしたい行動に集中しやすくなる

構造化でものごとの道筋が立てられれば、お子さまは望ましい行動を起こしやすくなります。スムーズに行動できれば集中するまでの時間も早くなるため、学習や生活に落ち着いて取り組みやすくなるのもメリットでしょう。

 

③お子さまが自信を持って学習・生活できる

「先生や家族に逐一確認せずに行動できた」「勉強や活動に集中して取り組めた」など、“構造化により、ひとりでスムーズに行動できた”という経験を少しずつ積み重ねれば、お子さまの自信へと繋がります。積極的に学習に取り組めたり、生活する上でのやる気向上になったりと、お子さまの「もう一度やってみよう」をより引き出せるかもしれません。

 

④効率的に学習しやすくなる

「集中して行動しやすくなる」「自信をもってものごとに取り組める」ようになれば、学習も効率よくスムーズにできるようになります。構造化で見通しが立つことで混乱やパニックなどの減少に繋がり、1つの行動に取り掛かるまでの時間を短縮できるためです。効率的に学習できれば、能力の向上などにも期待ができます。

 

⑤社会的な自立を目指せる

構造化を発達支援へ取り入れて得られるメリットは、幼少期のみに限ったものではありません。集中して行動して成功体験を積み、その結果自信を持って学習や生活に取り組めるようになれば、将来の社会的な自立にも繋がります。学校のような教育の場だけではなく、ご家庭や地域、職場などでも利用できる考え方です。

 

⑥家族の負荷を減らせる

構造化でお子さまの行動を支援できるのは、ご家族にとっても大きなメリットです。お子さまの学習や生活がスムーズになれば、家庭や外出時のスケジュール管理がしやすくなります。新しい予定や計画も立てやすくなるかもしれません。また、構造化を取り入れてお子さまの混乱やかんしゃくが減れば、本人だけではなく、ご家族にかかる精神的な負荷の減少にも繋がります。

 

構造化の例

構造化には「時間の構造化」「空間の構造化」「手続きの構造化」など、さまざまな種類があります。それぞれの特徴についてご紹介します。

時間の構造化

時間の構造化は「いつ」「何をするのか」など、その日のスケジュールや活動などを可視化させる方法です。

具体的には、文字やイラスト、写真などを使用して予定を示し、お子さまが見通しを立てやすいように支援します。時間を可視化するメリットは、何度でも確認ができる点です。記憶をたどるのではなく、好きなときに自分の目で予定を確認ができるため、お子さまは安心感を得やすくなります。

1日のスケジュールや活動の流れを見えやすくすれば、予定の見通しが立たないことへの不安やイライラが減り、お子さまの安心感や自信へと繋がりやすくなります。

時間の構造化は、お子さま本人が自分のスケジュールを管理しやすくなるのも利点です。言葉で聞いて覚えた指示や予定は、時間の経過につれて忘れてしまう可能性があります。しかし、文字やイラスト、写真などで時間や活動を可視化できれば、保護者や先生に毎回確認しなくても、自分で予定を確認できるのです。これは、精神的な自立や自信にも繋がっていきます。

また、「予定通りにものごとを進めやすくできる」だけではなく「予定は変わるものでもある」という認識の構築にも、時間の構造化は大切な方法です。例えば、当初入っていた活動がなくなった場合、作ったスケジュール表やカレンダーの項目に印を書きます。その結果、お子さんが「この予定はなくなったんだ」とより認識しやすくなり混乱を防げるかもしれません。

 

「ことばの教室そらまめキッズ」でも、時間の構造化でスケジュールを管理しています。上の画像のように、写真やイラストカードで予定を可視化すれば「何をするのか」の見通しが立つため、お子さまの安心に繋がるのが特徴です。また、急な予定変更にも落ち着いて対応できます。安心して課題にも取り組め、終わりの意識ができるのもメリットです。

※小学生以上で文字を書けるお子さまは、下の画像のような文字のスケジュールを使うこともあります。

 

 

空間の構造化

空間の構造化は「どこ」が「何をする場所」なのかを明確にする方法です。

空間の構造化では、空間とお子さまの行動を一致させて「どの部屋は何をする場所なのか」の明確化を目的としています。

空間の構造化の主な方法は「場所と取るべき行動のマッチング」「場所を仕切りではっきりと区別」の2つです。たとえば、勉強部屋や寝室、遊ぶ部屋など目的や用途に合わせた空間を作ることや、ドアやカーテン、ダンボールの仕切りなどで空間を明確に区切ることが挙げられます。学習する場所・遊ぶ場所・気持ちを落ち着かせる場所・スケジュール確認や行動の切り替えをする場所を、お子さまに分かりやすい形で示す方法です。

特に、不安やイライラが出やすいお子さまには、落ち着くための場所をはっきりと決めてあげるとよいでしょう。

「ことばの教室そらまめキッズ」でも、足形シールで靴の履き脱ぎスポットを可視化しています。

 

机と机に間隔を取り、集中しやすい空間作りも支援しています。

 

手続きの構造化

手続きの構造化は、活動や行動、物の位置などの手続きを細かく区切って、「何をするのか」をはっきりと示すための方法です。

順番の記憶や優先順位の決定などを、手続きの構造化で明確にします。「手洗いは手を濡らしてからせっけんで洗って水で流す」「ドアを開けたら閉める」「ゴミ箱はペダルを踏んで開ける」など、どんな順番で何をするのかを視覚的に提示するなどです。手続きの構造化は、短いスパンでの構造化を目的としています。

また、「手を洗ったらおやつ」「宿題の後に遊び」など、苦手意識を持つ活動を少し楽しみになれるような手続きを含めるのも効果的です。

 

「ことばの教室そらまめキッズ」でも、このように日常の活動や行動に手続きの構造化を取り入れています。イラストや数字、文字で手続きを可視化してトイレでの自立をサポートしたり、逐一確認せずにゴミ箱を開けたりできる分かりやすい仕様です。

 

ワークシステム(空間の構造化+手続きの構造化)

上記の3つ以外にも、空間の構造化と手続きの構造化を組み合わせた「ワークシステム」があります。ワークシステムとは、自立的な活動をするための情報を伝える方法です。

たとえば、お子さんが一人で活動しやすいように①何をするのか、②どれくらいするのか、③どうなったら終わるのか、④終わった後は何をするのかの4つの情報を伝えます。

自立活動のための空間は、仕切り用のパーテーションやフィニッシュボックス、色分けされたカーペット、課題や作業の材料棚など、お子さんが集中しやすい環境にするのがポイントです。実物を並べたり写真や文字などのマッチングを使ったり、ときにはお子さんが興味のあるものや好きなキャラクターなどを使うのもよいでしょう。

「ことばの教室そらまめキッズ」でも、イラストや数字などを用いた自立活動のお部屋があります。写真では、机の横の棚のカードをマッチングしながら順番に自立課題に取り組む仕様です。

 

まとめ

児童発達支援の場で役立てられる「構造化」についてご紹介しました。ご家庭でも手軽に取り入れられそうな方法はあったでしょうか。

構造化は、お子さまが自ら理解して行動するのに有効といわれている方法です。「ことばの教室そらまめキッズ」では、構造化を取り入れたさまざまな発達支援でお子さまをサポートしています。ご興味のある方、相談をご希望の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。